あんがーの樹

環境系大学院修了⇨法人営業⇨青年海外協力隊。平成元年生のアラサーが綴る。

配属先によるパラオの高校生向け環境ファシリテーションがすごかった。

2019年11月25,26日の二日間でパラオの自然保護プログラムであるProtected Areas Network(通称:PAN)の16周年記念カンファレンスが行われました。

16年も続けているのに今回が初めての開催だったようで、イベント自体もたくさんのプログラムが組まれ、なかなか大きなシンポとなりました。

僕の配属先であるEbiil societyは今回、プログラムの中の高校生に対するファシリテーションを担当したのですが、そこで行われた内容が非常に良かったのでご紹介したいと思います。

予想を超える人数の高校生が参加したファシリ

今回のカンファレンスにはパラオ高校、ミゼンティ高校、Heirs to Our Oceansのメンバーなどから85名もの参加がありました。

この人数は僕らの予想を超えており、余裕を見て用意した教材が若干足りなくなってしまうアクシデントもありましたが、何とかスタート。

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グループごとに円を作ってワークショップ開始

今回は普段からエビールソサイエティの活動に参加している5人の高校生をファシリテーターとし、4つのグループに分かれてファシリを開始しました。

最初に、環境に関する文章が書かれた22枚の紙を渡し、それらを大いに賛成、賛成、どちらでもない、反対、絶対反対の5段階に分けてもらいました。

これらの文章には環境保護に対してポジティブなものもネガティブなものも含まれています。

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配られた22の文章
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ファシリのルール説明
ファシリテーターはその文章の意味が分からなかったり、より深く考えられるよう、サポートをしていきます。
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高校生ファシリテーターがサポート
続いて、各生徒が最も賛成した文章、最も反対した文章などを発表し、ファシリテーターが大きな紙に文章の番号を書き出していきました。そして、もっとも数の多かった文章をそのチームの意見として、なぜそう思うのかを議論します。
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数の多い番号に〇をつけていく

なぜ環境を守らないといけないのか、だれが海を殺しているのかなど、様々な意見が飛び交っていました。

グループワークの時間が終わり、最後は全体ワーク。

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全体ワークの進行をする代表
各グループの賛成、反対の文章を発表し、数の多かった文章について、なぜそう思うのかを再度全体で議論します。

議論が進むにつれて話題は広がっていき、グループで話し合った意見だけではなく個人の意見も求められるようになります。

例えば、
7.「もし、私たちが行動を起こさなければ、海は死んでしまう」という文章に対し、

代表から「では、何が海を殺そうとしているのだろうか??」という質問が投げかけられます。

それに対し。

  • 海洋ごみ
  • 地球温暖化
  • オーバーフィッシング
  • オーバーツーリズム

といった意見が出ました。

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高校生による意見の出し合い
パラオでは漁業資源の枯渇が懸念されているため、ここからオーバーフィッシングを防ぐにはどうしたらいいか?」という議論に。

  • 厳しい法律と罰則を作る
  • 養殖を始める

という意見。しかし、現在のパラオでは小規模な養殖はあるものの、商業的に持続可能なレベルの養殖は進んでいません。

「何が養殖の弊害になっているのか?」という質問に対し、

  • 資金がない
  • 人々の熱意が足りない

こんな風に議論がつながっていきます。

ほかにも、
「22.人間はほかの動植物が絶滅する可能性があっても、生活するために必要なことは何でも許されるべきだ」に反対
  ↓
「ウミガメを食べる文化はなくすべきなの?」
  ↓
パラオの文化をなくすのは良くない。でも文化が残っていたのしても、ウミガメがいなくなったら元も子もない」
  ↓
「盗掘や密漁の規制が必要で、より多くの努力をするよう、みんなで政府に働きかけよう」

などなど。

少し方向性がそれる感じもありましたが、新しい切り口による議論が展開されていきました。

ある程度話し合ったところで1時間以上に及ぶワークショップが終了。

もう3時なので、学生たちはそのまま帰っていきました。

自分たちの意見を大人に伝える2日目

翌日、カンファレンス二日目のこの日は、パラオの政治家や環境保全にかかわる人々をパネルに迎え、意見交換会という形で議論をします。

もちろん前日のファシリに参加した高校生も参加し、大人たちに話し合った結果を伝えるという時間も設けられていました。

各チームのファシリテーターが代表として話し合った内容を発表。

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カンファレンスで若者の意見を発表する
自分たちの意見を大人にしっかり伝えることで環境保全の活動に参加しているという意識を強く持てるんだろうなぁと感じました。

自分の感じたこのファシリの良い点と悪い点

今回の良い点としては

  1. 個人で考える時間と集団で議論する時間が明確に分かれていた
  2. 完全にさぼってしまう子供がほとんどいなかった
  3. 抽象的な質問から具体的な話題に焦点が絞られていった
  4. 大人に意見する機会があった

最後の意見する機会については翌日のプログラムなのでファシリ自体の内容ではないですね。。

ただ、90人近い子供たちがキチンとこのファシリに参加できていたのは、進行役をしていた代表のワザでもあり、ファシリテーター役のエビールメンターたちの活躍でもあり、なによりパラオの子供たちの意識が素晴らしいと感じました。

一方で、悪い点も挙げるとすれば

  1. 教材の数が足りなかった
  2. 進行役の誘導があった
  3. 途中で帰る学生がいた

正直、予想を超える参加人数だったので、予備の分も使ってしまったことを考えると仕方ないかという気も。。。。

理由はよくわからないけど、ワークの後半で帰りのバスが来てしまい、遠くに住んでる学生が帰ってしまいました。3分の1くらい減っちゃったかな。この辺はパラオだから仕方ない(笑)

ただ、進行役の誘導についてはやはり修正すべきだなと思っていました。

代表は非常にお話が上手なのですが、若干自分の意見に引っ張っていく傾向があり、「う~ん、その流れは完全にあなたの意見が入っているよね。。。」という場面が一部ありました。

しかし、驚いたのは全体のワークが終わって片づけをしているとき、ファシリ役をしていた子供の一人が「司会がそう言うとみんなYESというしかなくなっちゃうよ」と意見していたこと。

どのシーンについて言っているのかまでは聞き取れなかったけど、大人にもしっかり意見できる高校生すごい!


さて、ここの配属先に自分のできる環境教育とは。。。(笑)