あんがーの樹

環境系大学院修了⇨法人営業⇨青年海外協力隊。平成元年生のアラサーが綴る。

自伐型林業を見学。HIPHOPが息づく伝統の智頭林業

林業就業支援講習@西粟倉3日目のレポートです。

前日は西粟倉村内での事業体による林業を見学しました。

この日はお隣の智頭町へ移動し、自伐型林業を見学します。

自伐型林業とは、自分の所有してる山や山主から預かった山を丁寧に手入れをしていく小規模な林業のこと。

あまり皆伐をせず、間伐を繰り返しながら木をゆっくりと大きくしていきます。

大きな重機を使わないので作業道も細く済み、山への負担が少ないことから自然に優しい持続的な林業として注目を集めています。

補助金漬けといわれる林業ですが、自伐型であれば補助金から卒業し、十分な利益を出して自立しているケースも。


一方で、個人や小規模人数での林業となることから、林業向きの山を所有していなかったり、山主さんの信頼を得て管理を任せてもらわないとスタートできません。

広大な日本の人工林をすべて自伐型林業で施業することは非現実的だと思う。やる人がいないんでねw


西粟倉のお隣、鳥取県の智頭町では古くから林業が盛んで、先祖代々林業のために手入れされながら引き継がれた山が多くあります。

今回お邪魔させていただいた大谷さんの山も非常に美しかったです。

HIPHOPの血が流れる自伐林業家

朝午前9時半。西粟倉から車で40分ほどの智頭町に移動しました。

今回ご案内いただいた大谷さんは、なかなか異色な経歴の持ち主。

智頭生まれの智頭育ちですが、HIPHOP好きが高じて渡米。本場アメリカでラップをやるなど、ディープなHIPHOPの世界を経験してきたそうです。

HIPHOPと林業、、、

これまで結びついたことの無い文化が僕の中で奇妙に混ざり合っていくのを感じました。

アメリカでの生活を通して、自分は日本人なんだという意識をより強く持ったという大谷さん。帰国して自営することを選んだそうです。

そして選んだのが自伐型林業

先祖代々受け継がれた山を自らの手で管理する道を選びました。

代々受け継がれた美しい森

地元の有志、智頭ノ森ノ学ビ舎が管理するTAMARIBAにてイントロダクションを受けた後、早速大谷さんの施業する山を見せていただきました。

そこはとても明るい森で、適度に間隔のあいた太く、まっすぐなスギ、ヒノキがずらりと立っていました。

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下層植生も豊富で、林内が明るい

地面には多くの植物が生育しており、鳥の声も聞こえます。

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枝打ちもきれいにされていて、鳥の声が聞こえます

代々丁寧に手入れされたからこそできた美しい林業地。

西粟倉の山と比べると、比較的斜面がなだらかで施業がしやすそうだなと感じます。


ここは大谷さんのお父さんの誕生祝にお爺さんが植林をした場所。大切にされるわけですね。

この木々の中から比較的成長の劣る木を選んで伐出、販売します。

事業体の林業とは異なり、伐出量が少なく、大きな重機もいらないため、林道は細く山に優しい道幅でした。

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木材を運び出す機械。かなり年期入ってるけど十分使えるそう。(顔出し許可を失念しました…)

素材を生かしたGive&Takeで作る地域の絆

山を見たあとは、切り出した材を余すことなく使う工夫を見せていただきました。

やはり林業はいかに無駄をなくすか、が非常に大きなポイントになるようです。どの仕事もそうなんですけど。。。

大谷さん(首にかけたヘッドホンからHIPHOPが流れている)についていくと、そこには大量の切り株みたいな材が。

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積み上げられたタンコロ。市場には出せないが立派な商品になる

これはタンコロといって、切り出した材を丸太にしたあと、余ってしまった部分。

市場には出せない材ですが、これを乾燥させ薪にして「智頭ノ森ノタンコロ薪」と名付け、販売しています(そのまんまですねw)

このタンコロ薪を地元のパン屋さんやゲストハウスにも持っていき、いただいたお金でそのまま飲食をして帰ってくるんだそう(笑)

時には物々交換のような形になることもあるそうですが、智頭の木を通じて地域のつながりができることは素晴らしいなと感じました。

林産物のキャッシュポイントをたくさん作る

適切に管理された山にはスギやヒノキ以外の植物もたくさん生えています。

そのような木材以外の資源を林野副産物と言います。

大谷さんのご紹介では、山に生えているヒサカキを収穫して販売したり、コウヤマキという樹木の剪定を行い、そこで出た葉を仏花用として販売したりと、キャッシュポイントを柔軟に作り出しているという印象を受けました。

ちなみに、コウヤマキが仏花として重宝されることを知っていたのは、大谷さんのもとで働く社員だったとのこと。長年の趣味である生け花の知識が役に立ったそうです。

まさに人財ですね。

暮らすを楽しむということ

最後に、大谷さんのおうちの裏庭に趣味の詰め込んだスペースがあるとのことで見せていただきました。

こちらは、製材機。

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大きな製材機。丸太を自在にカットできる。

専門で製材をすることはないものの、自分たちでいろいろ工夫してモノづくりを楽しみ、時には意外な値が付く商品になることも。

この大きなガレージや、センスの詰まった休憩室など、すべて大谷さんとその社員数人で作ったとのこと。

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大谷さんたちが作った丸太置き場、石垣も自分でくみ上げた。

家から離れた場所にあるので、仲間たちと深夜まで盛り上がれるというのも、男のロマンを感じますね。


「これから何をしようか、どうやっていこうかを手探りで考えられるのもこの仕事の醍醐味」と語る大谷さん。

影響されやすい性格の僕は、「うわ~やっぱ自営業っていいなぁ」なんて思っちゃうのでした(笑)