あんがーの樹

環境系大学院修了⇨法人営業⇨青年海外協力隊。平成元年生のアラサーが綴る。

林業講習2日目!西粟倉林業の川上を学ぶ。林業の再生と持続性を求めて

岡山県西粟倉村で行われた林業研修の2日目をレポートします!

一日目はほぼ座学でいろいろ考えたことはあるのだけど、記事にするのは少し後回しかなww

この日はずーっと外!というわけで、ここ西粟倉で行われている林業の間伐作業と、出てきた材が製品になるまでの先進的な仕組みを勉強させていただきました。

林業の川上(木を切る)から川中(製材、製品開発)、川下(販売)の流れでご紹介しようと思います。
(川中と川下の記事は別記事にします)

百年の森を作る劣勢間伐

林業の始まりは、伐採から。

正確には植林や手入れなどもっとたくさんありますが、今回は木が出ていくところから、ということで伐採がスタートとなります。

西粟倉の広大な森を管理、施業している株式会社百森さんに案内していただきました。


西粟倉では森林組合ではなく、民間企業で構成された協同組合(百年の森協同組合)が山主さんから山の管理を預かっています。

どの山にどうやって道を入れるのか、どのくらい間伐をするのかといった施業計画を立てているのが、田畑社長率いる(株)百森。

今回はなんと、西粟倉のベンチャー第一号といわれる株式会社木薫(もっくん)の國里社長にもご同行いただき、非常に豪華なメンツでの現場見学となりました。


早速現場を見に行こう!ということで、安心と信頼のジムニーに乗り込み、現場へと向かいます。


しかし、前日に降った雨の影響で林道はぬかるみまくり(笑)

まるでジェットコースターの最初の上り坂みたいな急こう配を唸りながら駆け上がっていくジムニーww

最後の最後で傾斜30度くらいあるんちゃうかという坂を上り切れなかったものの、相当な標高の現場付近まで連れてっていただくことができました。

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越えられなかった坂にトライするジムニー(後姿は田畑社長)

そこはとある山主さんの所有する林分。所狭しと植えられた50年生の杉がまるで壁のようにそびえたっています。

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立木の量と密度に圧倒されます。

村の森林の80%近くを人工林が占める西粟倉。その管理はこれまで十分とは言えず、ひょろりと高く育った杉は、あまり価値のある木材にはならないのだそう。

薄暗い森の中は、シカの食害もあって小さな植物が少なく、弱々しい印象を受けました。

この森を安全で健康な森に変えるため、間伐などの施業をされているのが株式会社青林の皆様。

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山仕事の血管ともいえる林道。大きめの重機を使うため、広く取られています。

社長も自ら現場に出て作業をされておりました(こちらの青木社長からは、3日目にしっかりとお話を伺うことができました)

ここで西粟倉の林業戦士が3人も揃うという、後から考えるとスゴイ状況だったなと思います(笑)

これ!!

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1台3役をこなす林業重機、ハーベスタ

教科書でしか見たことの無かった林業作業車ハーベスタを見ることができました!

この機械は木の伐倒から枝打ち、玉切りまでを一度にこなすことができ、人力よりも圧倒的に素早く、安全に作業をすることができます。

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アームで木をつかんで
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一瞬で伐倒
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設定した長さで玉切り
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最後は枝払いをして終了

すべての作業合わせても2分もかかりません。

しかし、アームが届く範囲でしか仕事ができないため、急こう配でマシンが林道からの作業に限られる日本の林業では作業範囲が限られるのが難点。

林道から離れた木は、やはり人の手で切り倒す必要があります。

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人の手で丁寧に間伐された劣勢木

西粟倉で行われているのは劣勢間伐

生長の悪い木を切り出し、より良い木を残して山の価値を上げていく方法です。

森への負荷が低く、良好な生態系や森林の機能を維持できる一方、作業効率が低く、施業が難しい一面も。


本当は列状皆伐をして、架線(ワイヤーでスキーのリフトみたいに材を運ぶこと)で麓まで下したほうがどれだけ楽か。。。

大学では、環境の観点から皆伐は悪だ!と習ってきたけど、実際に施業されている方の苦労やリスク、財政を考えると皆伐も必要なことかもしれない、と感じました。(皆伐についての意見はまた改めて記事にしたいと思います)

林業ベンチャーから熱い思いを聞く

途中から降ってきた雨の影響もあり、登ってきた以上に危険な路面状況となった林道。

小さな巨人であるジムニーを巧みに操りながら、運転していただいた社長お二人。(サイドブレーキの使い方めっちゃかっこよかった)

本当にありがとうございました。今生きてブログが書けるのは、田畑社長、國里社長のおかげです。。。


事務所にもどり、貯木場の案内をしていただいたあと、お二人の社長から話を伺うことができました。

不覚にもメモを忘れ、細かいところまで記録できなかったのが本当に悔しい。。


田畑社長からは、施業計画を立てる上での難しさや注意点などを伺いました。

道のつけ方ひとつでも山主さんへの説明をしっかりできるよう、現場視察や見極めが需要であること、山主さんの要望を聞きながらも、施業する会社のキャパシティーも考えたバランスが必要なんだそう。

複数の山主さんから森を預かり、一つの施業をしているからこそ、山主のだれか一人の了解を得られないだけで十分な計画が立てられなくなる可能性もあるため、信頼と実績を積んでこそ成り立つ仕事だと感じました。

そんな田畑社長は若干34歳(でもかなり若く見える。)、僕と3つしか変わりませんでした。

もともと地域おこし協力隊でやってきて、株式会社百森を立ち上げ、何十年の歴史がある森林組合にとって代わる事業を軌道に乗せるという、その柔和な印象からは想像のつかないスーパーマンだと感じました(幼稚なコメントで恥ずかしい)


株式会社木薫の國里社長からは、創設当時から現在に至るまでの変わらぬ思いと信念を伺いました。

(株)木薫は非常に珍しい林業経営から製品販売までを一貫して行う会社です。

ヴィン・ディーゼルを思わせる強面の社長からは想像しがたいですが(失礼)、その製品には幼児保育向けの家具や設備が多く、なんとこの後、認可保育園の運営まで始めるというまさにローカルベンチャー。

企業理念は「森から子供の笑顔まで」

「自分で作ったものの価格を自分で決められない林業の構造」と変えるべく、森林組合を飛び出す形で創業された國里社長。

今では全国にファンを多く持ち、関東方面にも山の整備を頼まれていくこともあるそう。

従業員全員が林業への愛着を持ち、苦労を知ることで、自分の言葉で語れるようにと、たとえ事務員であっても林内作業の研修を取り入れるなど、アツい企業姿勢を感じることができました。




さてさて、今回は林業就業支援講習の二日目、林業の川上部分のご紹介をさせていただきました。

実はこの部分は二日目午後に行われたもの。

午前中は林業の川中から川下部分の見学をさせていただいたのですが、それはまた次回。